そぞろごと

本、鉱物、音楽、etc.

エドガー・ポーの世界

仕事が忙しくて更新どころじゃなかったが、ここへきてなんとか落ち着きそうだ。

で、この前見たDVDの話から。

ジャン・エプスタンの「アッシャー家の末裔」、これはだいぶ前に Youtube で見て、いずれはちゃんとしたDVDで、と思っていた。今回買ったものがちゃんとしたDVDかどうかはともかくとして、大きな画面で見てはじめて納得のいった部分もある。


アッシャー家の末裔《IVC BEST SELECTION》 [DVD]

アッシャー家の末裔《IVC BEST SELECTION》 [DVD]


それは、ロデリックの妻のマデラインが、先代の妻、つまり自分の母の生まれ変わりだということ。というのも、先代の妻の肖像画には Ligeia と銘があって、ポーの「リジイア」を知っていれば、なるほどそういことか、と納得が行くのである。

こういう観点からすると、アッシャー家の呪いというのは、主人公が自分の母を妻にしているというエディプス的状況に由来するもので、火災によってアッシャー家のすべてが灰燼に帰したとき、主人公(たち)はようやく積年の呪いから解放されるのである。


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このDVDを見てから、ポーの世界にぐいぐいと引き寄せられる自分を感じている。ポーは私が最初に親しんだ外国人作家だったが、いつのころからか疎遠になってしまい、最近では思い出すこともなくなった。そういう自分が、いままたポーを読み直そうとしているのだ。

ポーの英文は、高校のころにはひどくむつかしく感じれられたが、今ではむしろやさしい英文に見える。もちろんそれはうわべだけのことで、ポーのむつかしさはほかのところにあるが。いずれにしても、「アッシャー家の崩壊」の冒頭部分などは、やはり原文で読まないと感じが出ないだろう。


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ポーは系統的な学識はなかったと思うが、目のつけどころのよさが絶妙で、彼の引用するものには気になるものが多い。たとえばモルグ街の殺人事件の冒頭に引かれたサー・トマス・ブラウン。これがずっと気になっていたが、ようやく最近になって「レリギオ・メディキ」ほかの著作を手に入れた。しかし、ブラウンの英文は、ポーの英文のようにすらすらと読めるしろものではない。

しょうことなしに、松柏社から出ている訳本を見たら、じつに明快な日本語になっていて驚いた。この訳本は非常にすぐれているので、安く出ていればぜったいに買っておくべきだと思う。


医師の信仰・壺葬論

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