そぞろごと

本、鉱物、音楽、etc.

ルイス・ブニュエル「小間使の日記」

をDVDで見る。

今回は原作を押さえていたので、30年前に見たときほど五里霧中の感じはなかった。むしろ分りやすすぎるくらいだ。

冒頭の、馬車での出迎えのシーン。ここでいきなりのジョゼフ登場に面食らうが、しかしこのバカボンパパみたいなおっさんがジョゼフとは! ううむ……

映画は、エピソードの羅列のような原作から少女殺しの部分をクローズアップして話を組み立ててある。それと、原作では冒頭でちょっと出てくるだけの靴フェチ男が、映画ではわりあい大きく扱われていて、これはたぶん最後のジョゼフ逮捕の場面に証拠として出てくるドタ靴の伏線にもなっているように思う。

いずれにせよ、原作にあった暴力と背徳と官能が、映画では大幅に薄まってしまっている。

それと引き換えに、原作ではさほどでもなかったインテリアの描写が映画ではかなり強調されていて、私のようにインテリア好きの人間にはこれだけでもたまらない映画だ。

インテリアつながりというわけでもないが、映画では靴フェチの大旦那様がセレスティーヌにユイスマンスの「さかしま」の一節を読ませるシーンが出てくる。これも前にはまったく気がつかなかったが、じっさいミルボーの原作は「さかしま」とよく似ている。デ・ゼッサントが蒐集するのが珍奇な古物だとすると、セレスティーヌの蒐集するのは生きた奇人変人との接触であり、その思い出である。そして、両者ともに、その背後には黒々とした人間性への嫌悪がわだかまっている。


小間使の日記 [DVD]

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