本の余白に

読書メモ

金原ひとみ「蛇にピアス」

「かたち三昧」に導かれて手にとった本。

高山氏はフィグーラ・セルペンティナータつながりで、蛇と名のつくものはいちおうチェックしないと気がすまないらしい。同様の性癖は私にもあるので、氏の気持はよくわかる。が、しかし、よりにもよって金原ひとみの「蛇にピアス」とは……

私はこの小説については、芥川賞をとったことしか知らない。どういう話なのかも知らないし、まったく興味はなかった。今回、「かたち三昧」を読まなければ、一生手にとることもなかっただろう。

これもなにかの縁と思ってアマゾンで探してみると、古本の文庫が一円で売っていた。かりにも芥川賞をとった小説が一円……。まあ、安いにこしたことはないので、作者にはわるいと思いながらこの一円本を買って読んでみた。

いや、案に相違して非常にいい。金原ひとみなんてどうせろくなものではあるまい、とたかをくくっていたのは私の誤りだった。芥川賞に値するかどうかは、少々疑問ではあるけれども……

まあこの小説については多くの人が語っているだろうから、私がここで屋上屋を架す必要はないだろう。そこでふたたび「かたち三昧」に戻って、高山氏がどう書いているか、確認してみたら……

「……二人の男と一人の女の倒錯的三角関係という以上、アダム、イヴ、悪魔の失楽園神話を忘れるわけにもいかない。悪魔が姿を変えたエデン神苑の蛇は、二枚舌(ダブルタン)。金原ひとみ最高の綺想は誘惑者の二枚舌を、文字通り「分かれた舌(スプリットタン)」という身体変工に物質化した点にある」

ええと、誘惑者つまり悪魔の役はシバさんで、彼はスプリットタンなんかやっていないんですけど。

一事が万事。氏の射た矢はつねに正鵠を失する。しかし矢が当ろうが外れようが、そんなことはどうでもいい。矢が空中に描き出す線がうつくしく「かたち三昧」していさえすれば。


蛇にピアス (集英社文庫)

蛇にピアス (集英社文庫)