本の余白に

読書メモ

「男が女になる病気」植島啓司

これはいわゆる「壁投げ本」だが、取るべきところがまったくないかというと、そうでもない。

取るべきところ、それは両性具有のテーマと、ホモセクシャルと、身体改造に関する部分で、おそらく著者としてはこういったことが書きたくて、それでむりやりエナレスなんていうものを持ち出して「学問」としての体裁を整えたんじゃないか、という気がする。

サブインシジョンといえば、「ググるな危険」にもカテゴライズされている要注意ワードだが、1980年という時期にすでにこれに関して「下部切開」の訳語のもとに適切な紹介がなされていること、さらにそれを古代ローマの少年皇帝ヘリオガバルスの人工女陰に比較しているところなんかはかなりの卓見というべきだろう。

あと、文庫版155ページにある、「(現実の世界と)異なる世界との間を自由に往復できる人間こそが神聖とされた」という指摘もすばらしい。両性具有が完全人の象徴なのも、男女というジェンダーの壁をやすやすと通り抜ける、その自在さにあるのではないか。

というわけで、ところどころに卓見が光る本ではあるが、そういうものを探して読むだけの価値があるかというと疑問だ。つまらない記述が多すぎて、読んでいるとイライラが募ってくるので、よっぽど精神的に安定しているときに読むべき本だと思う。


男が女になる病気 (集英社文庫)

男が女になる病気 (集英社文庫)