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本の余白に

読書メモ

昭和一桁台のエロ

エロエロ草紙 【完全復刻版】

エロエロ草紙 【完全復刻版】


「エロエロ草紙」とはまたすごい題名だね。
昭和五年というから、私の父の生まれた年にこんな本が出た、いや出かけたわけだ。
製本段階で発禁の憂き目にあったため、世には出回らなかったというが、じつは闇で売られていたんじゃないかな。

まあそんなことはどうでもいいとして、80年後の今日これを見ると、「どこがエロやねん」というつっこみは必至だ。
エロ成分ゼロとはいわない。しかし、限りなく稀薄であることは確かだ。
そのかわりといってはなんだが、粋と機知、シックとウィットだけはある。この二つの要素を味わうべき本だが、よくよく見ればこの両者、じつにみごとに空回りしてるんだなあ……エロエロと、いやいろいろと痛い本だ。

80年という年月のためにエロ成分が抜けてしまったのか。それもあるにはあるだろう。しかしそれだけではない。
どうも著者の酒井潔という人が、エロにはあまり興味がなかったのではないか。
そこへいくと、根っからの好き者であるピエール・ルイスの書いたエロエロ草紙、Douze Douzains de Dialogues のエロさよ。これはビデオなき時代の、字で読むビデオクリップだ。

「レヴュウ全盛時代」のなかに、「十四や十五の少女がエロ味を見せやうなんて、それは企む方が無理である」とある。この文を見ただけで、著者が今日的エロからはるか遠い地点にいるのがわかるだろう。

あと、本書14ページに「巷に流るゝ狂燥なジャズの音さえ……」という文があるが、昭和初期にすでにジャズが日本で聴かれていたのは驚きだ。
まあ、戦後も一時期まではアメリカのダンス音楽=ジャズという図式がまかり通っていたわけだが……